
ディズニーランドに勝ちたい!いちりゅう南宮崎店の目標
個人事業主になったばかりの頃、学生スタッフに目標を聞かれたことがあります。
そのときは、何の知識もなくやればできると思っていた自分は何を思ったか、
「ディズニーランドに勝つ!」そんなことを言っていました。
当然、何も考えていないとっさの言葉なので、何で勝つのか、どうやって勝つのかさっぱりわからない感じです。
今の自分はディズニーランドのすごさがわかってしまっている分、到底言えない言葉かもしれません。
そんなたわいもない目標が、まさか叶うとは…。そして悲しい1勝となった話です。
ある常連のお客様のお話
お店にはたくさんの子連れのお客様がいらっしゃいます。
僕が個人事業主になってからの古くからのお客様がいらっしゃいますが、時にはしばらくこなくなることもあります。
月に1回以上来られていたあるお客様は、1ヶ月、2ヶ月と来られない状況になり、半年以上経ちました。そしてある日、一本のご予約をいただきました。
久しぶりにお会いできるので嬉しかったのですが、そのときを境に、来られる頻度が週に1回、時には連日で来られるんです。たくさんご来店いただけるのは嬉しい限りですが、半年前にこられたときとは、ひとつだけ違う状況でした。
それは、2人兄弟だった弟くんが痩せてさらに髪の毛が抜けていたんです。何かの病気だと一目で気づくのですが、聞いていいものかわからずなかなか聞けません。
そのうち、来られる頻度が、3日や2日おき、そして毎日になってきました。
そのお子さんは小児癌でした。余命は1ヶ月。
お母さんは余命1ヶ月の彼に何が食べたいか、毎日聞いてました。
すると「いちりゅう(南宮崎店)」と言うそうです。
彼は、食が細くなりほとんど食べられません。しかし、ウインナーとご飯にタレをかけたタレごはん、そしてカラースプレーのチョコレートをかけたバニラアイスだけは、来店するたびに毎回注文されます。
そんな彼は亡くなるその日の夜まで来店してくれました。
葬儀にも出席しましたが、今まで以上に辛い葬儀でした。
いちりゅうは家族との楽しい思い出が詰まった場所
ご親族の方からお話を聞きました。
最後の1ヶ月は、いろんなところに出かけたそうです。近くのお寿司屋さん、ファミリーレストラン、USJ、そしてディズニーランド。
そしてディズニーランドのレストランで、彼が言った一言。
「いちりゅうに行きたい」
何気なく言った僕の目標である「ディズニーランドに勝ちたい」。
あまりにも悲しい1勝でした。
どんなに楽しい場所に行っても、近くでいつも行っているお店の強さ。家族といつも楽しんでいた思い出の場所。
いちりゅうは僕だけのお店ではない、僕のお店がここに存在し続けてもいいんだと気持ちを後押ししてくれる出来事でした。これからもいろんなお客様に来ていただけるよう頑張りたいと思います。